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京都からのイノベーション Vol.2
トリビュート琳派

iPop第二弾 CD全6曲
2017年7月1日 発表

JEUGIAの各店、又は各Music Storeのネット配信にてお求め頂けます

歌詞と解説

京都からのイノベーションの第一弾CD『千年のコンチェルト』を発表して、第二弾は京都が生んだ美術工芸の金字塔『琳派』を取り上げました。琳派という呼び名をご存じなくても、『紅白梅図屏風』や『風神雷神図屏風』はきっと目にされた事があると思います。18世紀後半の産業革命によって大きな社会変革をとげた欧米に遡ること300年、我が国では、上級町衆と呼ばれる新しい階層の台頭が、社会のみならず美術工芸の嗜好や需要を大きく変えていき、その中心ともいうべき京の街に、高い技術と秀れた意匠の域に到達した俵屋宗達という天才を登場させるのです。また、そのおよそ100年後には宗達に私淑するという形で自己の境地を極限と思える域にまで切り開いた尾形光琳が現れ、その光琳に私淑して江戸に光琳風を定着させた酒井芳一、その弟子鈴木其一らがその後に続きます。他の流派のように模写を通して画風を学ぶのと違い、先達の作り上げた境地に個々の特質を加味し、のちに『琳派』と称せられることになる絵師たちの手になる作品は、まるで宝石のように燦然と煌いて私たちの目や心を今なお満たし続けてくれています。そんな琳派の絵師たちと作品への最大級の感動と尊敬の気持ちを込めて、これら6曲からなる第二弾を制作いたしました。ポップ・ミュージックで綴るコンセプト・アルバム『トリビュート琳派』皆さんのお耳にどう響きますでしょうか。
 

 

壱 《 アート ~心の窓~ 》

写実 抽象 自在の絵筆
心に映る全てを捕らえ
新たなる眺めを提示する
その力量の堂々に
幾度魂奪われて
ただ呆然と立ち尽くす

人の歴史のある限り
見るもの聞くもの咀嚼して
新たなるフォルムを組み立てる
アートは人の中にあり
人はアートを産み出して
豊かな心に窓開く

風が運んだ音律と
波の繰り出す造形が
幾多の命に与えるリズム
果てる所のない営みに
人は心を揺すぶられ
また新たなる道を行く
また新たなる道を行く

歌詞解説



およそ世の中の絵師と呼ばれる人達は、見えるもの聴こえるもの感じることの全てを自分の思い描く形にするのではないか…と、つくづく感じ入ってしまうことがあります。それらは新しい眺めとなって私達の生活に関わってきます。単に壁を飾るものではなく、新しい窓となって新しい眺めを見せてくれます。自分自身の感動を歌詞を通して皆さんに伝えるって本当に難しいですね。それにしても、アートって心に新しい窓を開いてくれると思いませんか?


 

弐《 永遠に ~口上、そして「鶴図下絵和歌巻」考~ 》

《口上》

前口上でございます

縦34.1センチ
長さ14メートルに及ぼうかという長い絵巻物に
群れ飛ぶ鶴をば解き放ったのは 絵師 俵屋宗達
その上から三十六歌仙の和歌を
墨痕鮮やか自由闊達に記したのが
桃山のダビンチ 本阿弥光悦
書と絵のコラボ 鶴図下絵和歌巻
今は 京都国立博物館所蔵の
重要文化財でございます

さて、さて…

指折り時代を生き抜いて
今なお揺るがぬそのポジション
書画骨董のジャンルを越えて
アートの雄の地位を成す

ズドーン!

偉業の弾丸がぶち抜いた
時代の風穴通して見れば
はるか向こうに文明開化
あと何世紀か先のこと

人智を超えたクリエイション
瞬間を永遠に留め置き
想いの言の葉 目だけでなく
サウンドにまで昇華して
見る人聴く人包み込み
新たな世界へ誘いましょう

参った 参った
参りました
恐れ入りました!


《「鶴図下絵和歌巻」考》

鶴を見て
鶴の羽ばたき羽音を捉え
刹那の動き刻むのは
瞼の奥か絵筆の先か
やがて真白の画面を見据え
群れ飛ぶ鶴を解き放つ

舞い踊る
金銀の鶴の律動に
連なる三十一文字の声
耳目を襲う美の波動
天与の才の鬩ぎ合う
何帖も続く大絵巻

目指す処が頂上ならば
見極めるまでの道の途に
続々遺す美の証
後々の世まで伝えんと
その心根の深さを探り
胸打つ想いの深まるばかり
美の真髄に身を浸し
美の真髄に酔いしれる

鶴を見て
鶴の羽ばたき三十一の声
永遠を今に留めおき
永遠を今も映し出す

歌詞解説



それだけで十分以上に立派な俵屋宗達の描く鶴の絵の上に、本阿弥光悦の手になる三十六歌仙の和歌が書かれている14メートルにも及ぼうかという巻物『鶴図下絵和歌巻』を観て、当時の人たちは眼だけでなく、音まで感じたのではないか、と思ってしまったのです。静謐な部屋で巻物を紐解いて行くとき、鶴の羽音や和歌を詠む声が頭いや、心に響き渡ったのではないかと想像するのです。これは単に書と絵のコラボと呼べるものではない!サウンドまで伴って新しい窓を開けてくれたはずだと思ったのです。頂上を目指す絵師たちが、その途中で見つける手応えは、このような物凄い作品となって私達の前に存在していきます。「参った...恐れ入りました...!」思わず頭を下げるしかない私でした。


 

参 《 琳派マジック ~踊れ風神 嗤え雷神~ 》

風神雷神 何見て嗤う
屏風が土俵じゃ狭すぎる
五穀豊穣叶えて候
諸悪の根源払うて候
人の心に住み着いて
腕に覚えの技の数々
エイエイドーヤ!と舞い踊る
ドンドンガラガラ舞い踊る

風神雷神 何時の時代も
絵師の筆から飛出して
雨呼び風呼び雷呼んで
災い吹き飛ばして進ぜましょう
人の眼に焼きついて
千両役者も真っ青顔負け
エイエイドーヤ!と見得を切る
ドンドンガラガラ見得を切る

ドンドン ビュービュー
ガラガラ エイ!
神や仏と崇め召さるな
お宝なんぞと片腹痛いわ
憂き世の中とお嘆きならば
迅速早速我らに即決
水清ければ魚住む
住み良い日の本 千代に八千代に
巌となるまで粉骨砕身
本領発揮が我らの本懐
風神雷神 此処に在り!
風神雷神 頑張りまっせ!
いつも…
エイエイドーヤ!と舞い踊る
ドンドンガラガラ見得を切る

ドンドン ビュービュー
ガラガラ エイ!
ドンドン ビュービュー
ガラガラ ホイ!


風神雷神
琳派のマジック
絵師の筆から世直し世興し
乱世を鎮め人心護る
踊れ風神
嗤え雷神
琳派のマジック
エイエイドーヤ!と舞い踊れ!

歌詞解説



俵屋宗達が描いた風神雷神図屏風を、尾形光琳が、酒井抱一、鈴木其一が、神坂雪華が...と時代が変わっても次々描いたのは、絵師として風神雷神を描くことによほどの意味があったのか、それとも、宗達の絵の持つ力の秘密を解き明かすためだったのか、いったい何が次から次へと伝わるのでしょうか?門外漢の私にはよく分からないことなのですが、二人の神様を観ていると、いきなり動き出して何かしでかしそうでワクワクしてしまい、人々の役に立って世直しでもやって欲しいなんて思ってしまいました。屏風から飛び出してくる強い波動を感じてならないのです。


 

四 《 想い膨らむ ~「紅白梅図屏風」観~ 》

それは
突然形を変えて
意識の扉開け放つ
川を挟んで咲く紅の花に
待ちわびる姿の浮かびくる

たぎる思いを隠しても
なお惹かれゆく枝の先
流れる川に隔てられ
花の白さのいや増すばかり

何年時が流れても
絵師の残した心の模様
世の人を打つ想いの底に
変わらぬ愛の見え隠れ

届かぬ想いを心に秘めて
白梅紅梅 男と女
咲き誇る野に招かれて
今宵の宴のほろ苦さ
美の真髄と人の言う
美の真髄と人の言う

歌詞解説



光琳晩年のこの作品にはいろいろな解釈があるようですが、燕子花図を描ききったあの光琳が、齢を重ねて到達した境地がこの紅白梅図屏風に思えてなりません。人の心は簡単に分かるものではありませんが、待つ人に届けと枝を伸ばしていく白梅、それをまるで阻むかのような大きな流れ、その傍でじっと待ち続ける紅梅、それぞれの想いと咲き乱れる花の香に包まれて、早春の宴に迷い込んで味わった想い、人はそれを美の真髄と呼ぶのでしょうか。


 

五 《 Funky RIMPA 》

何を目論む琳派の匠
自由闊達趣くままに
意匠の極地を目指すのか
あるいは人智の及ばぬ聖地
孤高の道を歩くのか

いつの間にやら琳派と呼ばれ
ひとつの括りに評せられ
一派系譜の位置付けに
あらそうなのかと苦笑い
孤高の道こそその居場所

光悦 宗達 光琳 の
時代を超越 心の眼と手
まだなお褪せぬその粋と意気
美の驚きを撒き散らす
豊かの種を撒き散らす
琳派の道の400年
挑み続けた精緻の幾多
眼に鮮やかの大演舞
八重九重の大舞台
京の都の花の宴

Funky RIMPA
They brought us legacy
Funky RIMPA
The present from art
Funky RIMPA
They brought us Innovation
Funky RIMPA
The treasures of all mankind

歌詞解説



咲き誇る花のように、琳派の匠から生まれ出た作品が私たちを包み込んでくれます。そして、私達の心に種をまくかのように豊かさを植えてくれます。匠たちが何を目指したのか、単に己の技を誇示するだけではないと思います。匠の残したメッセージをどう受け止めるのか、味わうだけでは勿体無い!もし今の時代に匠が生きていたら、とんでもないファンキーな爺さんじゃないでしょうか。先進性って突然変異から飛び出してくるのかもしれませんからね!一つの流派と位置づけていますが、ご本人たちは苦笑いしてるような気がしてなりません!


 

六 《 RIMPA、世界へ! 》

時は19世紀のヨーロッパ
アールヌーボー 新たな息吹
フランス ベルギー イギリス ドイツ
オーストリーに沸き起こる

一方日本じゃ文明開化
猫も杓子も欧米化
衣食住から軍隊憲法
列強と肩を並べましょう

ところがあちらは真逆のブーム
その名もなんとジャポニスム
歌舞音曲から浮世絵と
かきたてられますエキゾチシズム

それにも増して…
天才匠の技の数々
出島の窓口シーボルト
フェノロサ工芸美術を讃え
天心 日本の美を説いた

居並ぶ巨匠が目を剥いた
300年も遡る
ファーイーストの到達点
裏山こぞって大絶賛

江戸から巴里
巴里から東京
金波銀波の波乗り越えて
RIMPAと呼ばれて逆輸入
300年を飛び越えて
意匠のトップに躍り出る
世界の舞台に躍り出る

恐れいります琳派の系譜
光悦宗達光琳乾山
江戸には抱一其一が続き
クリムトの絵にもRIMPAの味わい

浅井忠やら神坂雪佳
先人の轍を踏みしめて
図案意匠の時代を拓き
京で琳派の意志を継ぐ

江戸から巴里
巴里から東京
金波銀波の波乗り越えて
RIMPAと呼ばれて逆輸入
300年を飛び越えて
日本もRIMPAを再確認
世界も日本を評価した

そして100年たった平成の御世
まだ色褪せぬ美の心
伝統古典と呼ぶのは自由
匠の技を解き明かし
なおその意をば汲み取れば
未来に広がる道がある
全てが今も生きる街
全てが今も生きている

京の都の美の宝
琳派の道の400年

歌詞解説



バラッド・オブ・琳派です。ショーのような音楽に仕上げましたが、まず人名のご説明を!光悦、宗達、光琳、乾山はよくご存知だと思います。抱一は酒井抱一、其一はその弟子の鈴木其一で後に江戸琳派と呼ばれる江戸中〜後期の絵師。シーボルトは主に光琳の作品を長崎の出島から伝えた医師で日本史でもお馴染みの名前、明治に入ってフェノロサは世界に琳派の工芸品を高らかに喧伝し、その弟子にあたる岡倉天心も国内だけでなく海外でも日本の美を説きました。浅井忠は洋画家ですが欧州で琳派に触れ、神坂雪華は琳派研究と創作活動を、それぞれ京都で琳派の意を受け継いで新しい意匠の世界を確立して行きます。また、クリムトはよくご存知の画家ですが、他にも琳派の香りを感じさせてくれる有名な画家たちがいます。19世紀の終盤の頃パリで紹介され、世界に飛び出していった琳派をもっと今に活かして欲しい京都の街。400年の時を超えますますその道を広げていけば良いなと思うのは私だけではないと思います。

作詞・作曲:太田聖二/佐藤礼奈




佐藤礼奈 : Vo&Pf
三好ひろあき : Gt
深澤学 : Perc